猫のあくび 文具と猫と日常と

文房具の話や趣味のハンドメイドなど好きなコト語ります…

新井素子著「イン▪ザ▪ヘブン」

久しぶりに新井素子さんの本を読みました。この方の著書にしてはめずらしい短編集!タイトルがタイトルなだけあって、生死観とか考えてしまうような話が多かったです。

文体が苦手という人も多いらしいですが、子どもの頃から読んでるからか、個人的には違和感は無いです。元々乱読派なので、比較的文体の許容範囲が広いのかもしれませんが。

話のテーマとしては人類の衰退的な話が多くて、「チグリスとユーフラテス」を少し思い出しました…。というか、ネタバレ無しで感想書くのは難しいですね。なんて事ないような話の最後にSF的設定が隠れてたりと、やっぱりSF作家なんだなぁ、なんて失礼な事を思ったり。

SFらしい人類衰退物語でも、何故かあまり後味の悪さは感じません。あとがきで触れられていますが、

'どちらも、「人間って、捨てたもんじゃないぞ」っていうお話。多分、最終的に私は、それを言いたくてお話を書いているんだろうと思います。'

この思想が根底にあるから、設定的に人類がどん詰まりにいても、そこはかとなく暖かい視点を感じられるのかな…と思います。基本的に性善説の人なんだなぁ、としみじみ感じました。色々不条理な事に満ち溢れる世界だけど、それでも人間は捨てたもんじゃないという説は、心にわずかでも救いをもたらすものです。それを信じていられたら、もう少し生きやすくなるのかもな…などと思ったり。(私は基本悲観主義者なので、このような思想に触れることでバランスを取ろうとしてるのかもしれない)

生死観とか宗教観という意味では、個人的には受けつけないものも有ると言えばあるわけですが、「お話」だと思えばすんなり読めます。そういう世界だと思えば特に違和感を感じないというか…SFやファンタジーを読み慣れない人は引っ掛かるものがあるのかもしれませんが、その辺は好みの問題でしょうか…。

新井素子さんと言えば、いつの間にか「星を行く船」シリーズが再編集で出てますね。子どもの頃夢中で読んだので懐かしくて、買おうかどうしようか悩んでます。電子書籍なら場所とらないからいいかな。今の年になって当時のパワフルなヒロインに感情移入出来るかはわかりませんが、また別な視点で読めるかもしれませんし、子どもの頃の気持ちに少しでも戻れたらそれはそれで楽しいだろうなぁ…。

とりあえず、トータルで面白く読めました。また短編書いてくれないかなぁと思いますが、基本長編をゆっくり書く方なので難しいかな^^;